HyperX Cloud III と BlackShark V2 Pro|1万円差で何が変わるか
※本記事はアフィリエイト広告(Amazonアソシエイト等)を含みます。順位はプロの実使用率データに基づいており、広告主から報酬を受け取ることで順位を変えることはしていません。
FPSのヘッドセット選びで最初にぶつかる壁が、この2機種の比較だと思う。HyperX Cloud III と Razer BlackShark V2 Pro。有線の約1万円台と、ワイヤレスの約2万円台。SAZ(サドンアタック ゼロポイント)は爆弾解除モードが核で、そこでは音の定位が生き死にを決める。じゃあ倍の金を出せば定位も倍良くなるのかというと、そうはならない。ここを正直に書く。
VALORANTプロの使用率では、どっちが上なのか?
数字だけ見ればBlackShark V2 Proの圧勝だ。679人中135人・19.88%で2位。Cloud IIIは22人・3.24%で6位。6倍以上の差がついている。
ただ、この比較には注意が要る。HyperX の Cloud II が79人・11.63%で3位に入っていて、これは Cloud III の前世代機だ。HyperX ユーザーは Cloud II に留まっている人が多く、III への移行が進んでいない。プロは一度手に馴染んだ音場を変えたがらない。エイム同様、聴き分けも身体に染み込ませるものだからだ。つまり Cloud III の3.24%は「Cloud III が劣る証拠」ではなく、「Cloud II 勢がまだ乗り換えていない」という別の事実を含んでいる。
1位は Razer BlackShark V3 Pro の156人・22.97%。V2 Pro(135人・19.88%)と合わせると、この2機種だけで4割を超える。V2 Pro は世代交代の途中にありながら、なお2位を保っている型番ということになる。ちなみに同じV2世代の下位機 BlackShark V2 は10人・1.47%で8位。上位機以外はここまで落ちるので、V2 Pro の19.88%は「型落ちが惰性で残っているだけの数字」ではないことが分かる。

Razer BlackShark V2 Pro(2位・135人 19.88%)
プロ選手の使用率(2026年7月時点の公開集計)
プロ帯で BlackShark が支持される理由は、低域を抑えて中高域を持ち上げたチューニングにある。爆発音やスキル音で足音がマスクされにくく、遠くの一歩を拾いやすい。爆弾解除というルールの性質上、設置後は「サイト裏に何人残っているか」を音だけで詰める局面が必ず生まれる。そこで効くのは迫力ある重低音ではなく、細い足音が潰れない中高域だ。加えて密閉型のイヤーカップが外音を遮り、自分の声の反射も減らす。
こんな人向け: ランクマッチを毎日回す前提で、デスク周りをケーブルレスにしたい人。索敵コールを頻繁に出す役割の人
HyperX Cloud III(6位・22人 3.24%)
プロ選手の使用率(2026年7月時点の公開集計)
前世代の Cloud II が79人・11.63%で3位に入っていることが、この系統の実力を示している。有線接続なので遅延要因が構造的に少なく、電池切れという概念がない。装着圧が緩めで側圧が強くないため、長時間の連戦で耳が痛くなりにくい。爆弾解除は1試合が長引きやすいモードで、後半ラウンドの集中力が結果に直結する。頭が痛くならないことは、それ自体が競技的なアドバンテージだ。
こんな人向け: 予算を約1万円台に抑えて、その分をマウスやモニターに回したい人。充電を管理するのが面倒な人
いま決めきれないなら、候補をカートに入れておくだけでもいい。Amazonはカートに入れた商品の情報が一定期間保持されるので、値動きを見てから決められる。
価格差およそ1万円は、そのまま定位の差になるのか?
ならない。ここが一番誤解されている。
定位、つまり音の方向と距離を当てる能力は、ヘッドセットの価格ではなくゲーム側の音響処理と、自分の耳がその音場を覚えているかどうかでほぼ決まる。FPSの足音は左右の音量差と、わずかな到達時間差で方向が生まれている。この差を再生できるかどうかに、約1万円と約2万円の間で決定的な段差はない。両方とも十分に再生できる。
差が出るのは別のところだ。銃声や爆発音が鳴っている最中に、その下に隠れた足音を聞き分けられるかどうか。ここは低域のチューニング次第で、BlackShark 系のほうがやや有利になる。ただしこれは「上手くなる」ではなく「情報が拾いやすくなる」レベルの差で、クロスヘア配置や事前の位置予測を鍛えたほうが伸びは大きい。音の使い方そのものは足音で位置を割り出す音インテルの基本に整理してある。ゲーム内の音量バランスやサラウンドの扱いは音まわりの設定ガイドのほうが先に効く。設定を詰めずに機材だけ買い替えるのが、一番もったいない金の使い方だ。
もうひとつ言っておくと、SAZの公式動作環境は Windows 10・Core i3 / Ryzen 3・GTX 1060 3GB・メモリ16GB と軽い。ヘッドセットに約2万円出すより、フレームレートが安定していない環境ならそっちを先に潰すべきだ。音が良くても、画面がカクついていたら反応できない。
| 項目 | HyperX Cloud III | Razer BlackShark V2 Pro |
|---|---|---|
| VALORANTプロ使用者数 | 22人 | 135人 |
| 使用率・順位 | 3.24%・6位 | 19.88%・2位 |
| 接続方式 | 有線 | ワイヤレス |
| 価格帯(2026年8月時点) | 約1万円台 | 約2万円台 |
| 充電の必要 | 不要 | 必要 |
| ケーブルの取り回し | あり(干渉する) | なし |
| 同ブランド前世代・旧モデルの順位 | Cloud II が3位・79人 11.63% | BlackShark V2 が8位・10人 1.47% |
使用者数・使用率は prosettings.net 集計の VALORANT プロ679人(2026年7月30日時点)。価格は2026年8月時点の目安で変動する。
ワイヤレスにすると音は良くなるのか?
これは正直に書く。ならない。
ワイヤレスで買っているのは音質ではなく、取り回しだ。ケーブルがないと何が変わるか。ローセンシでマウスを大きく振る人は、腕の振りがヘッドセットのケーブルに当たる。デスクの端に引っかかると、その一瞬でエイムがズレる。爆弾解除の1対1で、その一瞬は致命傷になる。デスク上の物理的な干渉を減らすという意味では、デスク環境とマウス周りの整理と同じ話だ。
代わりに払うコストが充電の手間。バッテリーが切れれば、そのヘッドセットは音の出ない置物になる。試合中に切れる恐怖を毎回抱えるくらいなら、有線のほうが精神的に楽だという人は普通にいる。俺が現役の頃も、練習は有線で通す選手は珍しくなかった。
判断基準はシンプルだ。週に何回、どのくらいの長さでプレイするか。毎日2時間以上回すなら充電サイクルが生活に組み込まれるので、ワイヤレスは合う。週末にまとめて数時間なら、久しぶりに座ったら電池が切れていた、が起きやすい。有線のほうが向いている。

じゃあ結局、SAZ用にどっちを買えばいいのか?
俺の結論はこうだ。
初めてゲーミングヘッドセットを買うなら Cloud III。約1万円台で足音は十分に聞こえるし、充電を意識せずに済む。浮いた約1万円をマウスやモニターに回したほうが、勝率への効き方は大きい。VALORANTプロ679人は分析対象の全員が240Hz以上のモニターを使っていて、360Hzが現在の標準になっている。音より先に、見える環境を整えるべきだ。詳しくはリフレッシュレートの選び方にまとめた。
すでにマウス・モニターが揃っていて、次に投資するものを探しているなら BlackShark V2 Pro。ケーブルの干渉が消えることの快適さは、慣れると戻れない。679人中135人・19.88%という数字も、単なる人気ではなく実務での選択の集積だ。
そして、どちらも今は買わないのが正解、という人もいる。手持ちのヘッドホンで足音の方向がだいたい取れているなら、次の1万円はヘッドセットではなくモニターかマウスに向けたほうが伸びる。この2機種の差は、勝率を跳ね上げる類のものではない。ここを盛らないのが、俺がこのサイトでやると決めていることだ。
有線イヤホン型(IEM)も選択肢としてはある。密閉型ヘッドセットより軽く、耳が蒸れない。ただしIEMについてはプロの使用率として公開された集計データが存在しないので、数字で語ることはできない。頭の片隅に置いておく程度でいい。ヘッドセット全体の選び方は足音が聞こえるゲーミングヘッドセットの選び方を、プロのデバイス傾向をまとめて見るならプロのデバイス使用データ2026を見てほしい。
最後にひとつ。SAZは2026年7月30日14時にSteamで早期アクセスが始まったばかりで、基本プレイは無料だ。ランクマッチはアカウントレベル9(軍曹Ⅰ)から解放される。まずは今持っているヘッドホンで、爆弾解除の5マップとTDMの2マップ、合わせて7マップを一通り回して、どの音が聞こえなくて死んだのかを記録してからでも遅くない。それが分かってから買ったほうが、同じ金でも満足度は確実に高くなる。




コメント